研究ノート

塩崎太伸

ひとりの哲学者が撮った建築写真を5時間ながめてみて

編集者の長島明夫さんの発案で、自身も写真を撮っている若手建築家の大村高広さんといっしょに、多木浩二さんが一時期に撮った建築写真について考える会を開いた。 そのいきさつはここでは省略しますが、実に5時間におよぶ時間を長島さんのご自邸で過ごした…

日記帳のような空間──《長野須坂・ロングハウス》

初出:新建築住宅特集, 2015.4 長野の県道沿いに建つ2世帯住宅。車通りの多い東側の県道と、幅の狭い北側の道路に敷地は面している。けれど、気心が知れた近隣の人たちが自然と敷地を訪れる地域だったから、敷地の全方位に開いたときの効果に期待するより、…

母なる空間─六角鬼丈自邸《クレバスの家》

文・塩崎太伸 初出:新建築住宅特集, no.335, 2014.3 秘匿なクレバス 六角自邸・《クレバス》は、中央線沿いの閑静な住宅地のただでさえ奥まった旗竿敷地の中で、手前に建つ母屋の、さらに奥にひっそりとたたずんでいる。道路からはその姿をほとんど見ること…

スケッチというイメージング ──《蓼科山地の初等幾何》

初出:JIA MAGAZINE, no.317, 2015.7 よく言われることであると思うけれど、スケッチというのは、建築家が頭の中のイメージを吐き出す相手であると同時に、そこから何かしらのイメージを手に入れるためのものでもある。スケッチを描く運動と、その結果として…

第3の透明性、あるいはニュー・エイジ・オープンネス サマリー

和レトロモダンと透明性 今となってはとりたてて目新しい言い方ではないけれど、まずは今を見渡した時の整理を研究のバックグラウンドとして書留めておきます。 きっかけは2000年を少し過ぎて、私が博士課程に進学した頃だと思うけれど、商業施設に並ぶもの…